おひとりさまを、噛み締めろ。

5月某日。
中々ひく気配のない厄介な風邪を一気に吹き飛ばすために、花隈へチゲを食べに行く。
久しぶりに店を訪れたら、かつての倍くらいの広さになっていてビックリする。
お会計のときに、「広なったんですな」とアガシと2,3分立ち話をする。
高架下を歩くのもまた、京都でも大阪でもない、「神戸」という街のアイデンティティーを実感する瞬間だ。
一見さんではわからない、神戸の街のテイストを十分に味わうには、大勢でワイワイ歩き回るよりも1人で、あるいは気の置ける誰かと一緒に気分の赴くままに歩く方がいい。

5月某日。
正月以来の久しぶりに祖母に会いに行く。
駅前の商店街をぶらぶら歩いていると、一緒にイギリス派遣で仕事をしている方から教えてもらった10円饅頭のお店を発見する。
あいにく日曜だったせいか、その店のシャッターは閉まっていて、たぶん隣の店なんだろうけど、その店の商品がシャッターの前まで陳列されていた。
祖母の家を離れ、先輩と三宮界隈の百貨店を物色したのち、無性にあれが食いたくなって途中下車をする。
「あぁこれこれ、これなんだよな」と心の中で呟きながら、いつ訪れても変わらない価値に自分の限界効用が少しだけ改善される。

5月某日。
早朝バイトを終えて、餌を食べに自宅に戻る。
車を走らせ、海のそばまで出かける。
まぁ目当ての買い物はできなかったんやけど、澄み切った空と、今日も堂々としている明石大橋と、その上空を旋回している飛行機を眺めていると、これはこれでまぁ久しぶりにドライブに出た意味はあったよな、と心の中で呟く。
そんなドライブのお供に聞くのが、802だったりする。
独特のくどくないDJの声が、ますますドライブを心地いいものにしてくれる。
体調も良かったのか、そんな日のドライブは車もスムーズに動いてくれる。

おひとりさまだからこそ、見えてくるものもあるもんだ。